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Nao Nakai

2022.03.12Story

#平穏

津南の静かで穏やかな森を覗いてみよう

マット・クランパート

津南の森と癒し、森と暮らしとの関わりについて紹介します。

森林セラピー基地「樽田の森」

 森林浴という言葉を聞いたことがあるでしょうか。実は、この「森林浴」は、多忙な都会で働く人々のストレスや不安、疲労を解消するための補助的な健康法として考案された、日本発のコンセプトです。自宅近くの屋外だけでなく、交通や工事の騒音から逃れ、自然の音と安らぎに満ちた森林で一定の時間を過ごすことが必要だという考えで生まれました。この日本発祥の森林浴が、海外では「フォレストベイシング」と呼ばれて注目されています。

 そして、日本国内には、森林浴によって癒しの効果や病気の予防効果が科学的に認められた「森林セラピー基地」というものがあります。森林セラピー基地は、厳しい条件をクリアする必要があり、全国で62カ所しか認可されていません。津南町の緑豊かな樽田の森はそのひとつです。

 森林セラピー基地「樽田の森」には、13kmを超える風光明媚でのんびりとしたウォーキングコースがあります。難しいハイキングコースではなく、のんびりとした散歩コースなので、幅広い年齢層の方に楽しんでいただけます。例えば、「じょんのびコース」は、初心者にやさしい2.5kmのゆったりとしたコースで、1時間程度で回れるようになっています。

 森林セラピーは、目的地に時間内に到達することや、カロリーを消費することが目的ではありません。森林セラピーは、時間をかけてゆっくりと森の時間を味わいます。ありがたいことに、特別なスキルは必要ありません。

五感の大切さ

 では、一般的な森林セラピーの内容を紹介します。津南には認定された森林セラピーガイドが10人ほどおり、そのガイドと同行して森に入ります。森林浴の効果を最大限に発揮させるために、ガイドの存在は欠かせません。

森林セラピーの本質は、五感を駆使することにあります。日常生活のなかでは、仕事中はパソコン、空き時間はテレビやゲーム、寝る前はスマホなど、1日中ほぼ視力だけに頼っている人が多いのではないでしょうか。これでは、他の感覚が鈍るばかりか、目を酷使することになり、余計なストレスがかかってしまいます。

 一方、森林セラピーでは、五感をフルに使うことになります。樽田の森は、さまざまな動植物が生息するブナの森や、澄んだ川など、美しい自然に囲まれた環境です。津南の山々や渓谷の眺望も素晴らしい。

津南 森林セラピー基地

 そのため、会話はあまりありません。足元の草や葉の音、鳥の声、風のそよぎなどに集中してください。葉っぱの感触を味わいながら、お気に入りの石や花を探したり、木を抱きしめたり、ヨモギやリンデラの葉の心地よい香りを楽しんだりしてください。

 森林セラピーのガイドは、あなたの五感をフルに使うように導いてくれます。たとえば森で見つけた植物を煮出してお茶にしたり、そのまま食べることもあります。また、ご希望によりヘルシーな「デトックス弁当」をご用意しています。

津南のブナの森

 「樽田の森」は、典型的なブナの森です。冬になると森は雪に覆われて、根元近くの幹は雪の重みで押しつぶされます。ブナは雪の重みに耐えるしなやかな幹をもっていますので、雪がとけると再び上へと伸びはじめます。これを繰り返すことで、津南のブナの樹は根元のあたりが大きく曲がっているのが特徴です。

 ブナは、一般的に早く芽吹き、春の訪れを知らせてくれますが、花は5〜7年に1度しか咲きません。津南は雨が多いためブナの葉が大きく育ち、森の中の日差しを弱めてくれるので、夏でも比較的涼しく過ごすことができます。津南のブナの森の奥深くには、樹齢200~300年の木もあります。

ブナの森に囲まれたライフスタイル

 古来からブナの森は、津南の人々にとって重要な存在でした。そのつきあいは、1万6千年前にはじまる縄文時代にさかのぼります。縄文人は狩猟採集民であり、食料や住居などすべてを森に依存していました。その後、近代になって、木はエネルギー資源=薪として利用されるようになりました。

 ブナは、雪下ろしに便利な四角いスコップ「コスキ」の材料として使われていました。金属製のスコップと違って、平らなコスキは屋根を傷つけずに雪をはらうことができました。ブナが多いということは、ブナの実がたくさん取れるということでもあります。昔は子供たちのおやつにもなっていましたが、今はあまり食べませんし、コスキもあまり使われなくなっています。

 現代では、硬いブナ材を乾燥させ、形を整える技術が発達したことで、家具にも使われるようになっていますが、津南町では森林セラピーなどのために多くの森が保護されています。日本では広葉樹林の多くがスギに置き換わってしまったため、津南のブナは貴重な資源でもあり、その活用とともに保全していくことは大切なことです。

津南の森がもたらす癒しの力

 津南の森や木々には、心を落ち着かせる力があります。このような木々や美しい自然の中に身を置くことは、現代において新たな重要性を持つようになっているのではないでしょうか。私たちの日常はどんどんスピードアップしていますが、たまにはゆっくりすることも必要です。そのために、森林セラピーはいいアクティビティです。津南町森林セラピーについてのお問い合わせは、こちらからどうぞ。

マット・クランパート

米国で生まれ、2013年に日本に移住。宮城と東京で英語教師を務めた後、教育出版社で編集者になる。2021年に新潟県に移住し、現在はデジタルマーケティング会社や日本地域おこし協力隊でライター・編集者として働く。主に日本の地方を英語圏の人に紹介する仕事をしている。

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